昨今のソフトウェア開発において「DevOps(デブオプス)」を採用する現場が増えています。
しかし、DevOpsという言葉を聞いたことはあっても、その実態を理解していない人は多いのではないでしょうか。
今回はDevOpsとは何か、概要からメリット・デメリット、導入のポイントまでまとめてお伝えします。また、混同されやすいアジャイル開発との違いも解説していきますのでぜひ最後までご覧ください。
- もくじ
1.DevOpsとは
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DevOpsとは、開発担当者と運用担当者が密接に連携しながら開発・運用を行い、ソフトウェア開発の価値を高める考え方や仕組みのことです。
まずはDevOpsとは何かや、アジャイル開発との違いについて解説します。
DevOpsの定義は明確にはない
DevOpsという言葉が使われる機会は増えているものの、その明確な定義は存在しません。
DevOpsは、Development(開発)とOperation(運用)の造語です。そのためDevOpsを採用している現場は、開発と運用が強く結びついた体制であるといえるでしょう。
DevOpsを採用する場合、開発・運用間で双方のアクションを円滑に行える仕組みを構築する必要があります。
例えば、開発担当者が制作したソフトウェアは、運用環境へ円滑に展開されなければなりません。
一方、運用担当者が発見したソフトウェアの問題は、開発担当者へ円滑に共有されることが求められます。
アジャイル開発との違い
DevOpsについて、アジャイル開発と混同している人も多いのではないでしょうか。
アジャイル開発とは、ソフトウェア開発を短期間のサイクルに区切り、各サイクルで計画・設計・実装・テストといった一連の工程を進めていくソフトウェア開発の手法です。
アジャイル開発は「開発をどのような手順で進めていくか」という方法論であり、「開発担当者」や「運用チーム」といった人・組織には直接的に結びつきません。
一方で、DevOpsは「開発体制がどうあるべきか」に着目した考え方であり、人・組織に強く結びつく概念であることが違いといえます。
ただし、DevOpsとアジャイル開発は異なるものの、密接に関連しています。
実際にアジャイル開発を採用する現場が、DevOpsの実現に取り組むケースは多いでしょう。
アジャイル開発で生じる生産性低下を防ぐうえで、DevOpsの実現が有効となるためです。
1サイクルの期間が短いアジャイル開発では、開発したソフトウェアを運用に引き継ぐ、という流れが頻繁に発生します。
このとき、開発・運用の連携がスムーズにできなければ、毎サイクルで多くの時間的コストが発生するでしょう。
こうした問題の有力な解決策が、開発・運用の連携改善につながるDevOpsです。
2.DevOpsを採用する3つのメリット
DevOpsを採用することは、開発側にとって以下のようなメリットがあります。
メリット1:生産性の向上が期待できる
開発と運用の連携が円滑に進まなければ、生産性の低下につながります。
例えば、運用担当者から開発担当者に不具合の報告を行う場合、報告内容に不備があれば、開発担当者から問い合わせる必要があり、手間がかかってしまいます。
しかし、DevOpsを正しく取り入れていれば開発・運用間の連携が円滑に進み、確認作業や認識違いによる手戻りを減らせるでしょう。結果として、ソフトウェア開発全体の生産性向上につながります。
メリット2:リリースを高速化できる
DevOpsでは多くの場合、開発が完了したソフトウェアを自動で運用環境にデプロイ(展開)する仕組みを構築します。
リリース作業に手間がかからなくなるため、ソフトウェアのリリースを高速化することが可能です。
また、開発・運用間の連携が円滑に進めば手戻りが減り、リリースの遅延を引き起こす要素を減らせるでしょう。
リリースを高速化できることは、開発現場だけでなく顧客やエンドユーザーにとってもメリットがあるといえます。
メリット3:サービス品質の向上につながる
手作業でテストやリリースを行う場合、どうしても人為的なミスは発生しやすくなります。
例えば、テストの実施ミスで不具合を検出できないような事態となれば、サービス品質は低下するでしょう。
一方、DevOpsを開発に取り入れることで、さまざまなツールを用いてテストやリリースなどの作業を自動化・簡素化します。
開発や運用における手作業を減らすことで正確性が高まり、サービス品質の向上につながるでしょう。
3. DevOpsを採用する2つのデメリット(導入初期の壁)
DevOpsの採用には多くのメリットがある反面、あらかじめ把握しておくべきデメリットもあります。ここでは、DevOpsを導入する際の代表的なデメリットを2つ紹介します。
デメリット1:導入や学習にコストがかかる
DevOpsを実現するためには、新しい技術や概念を理解したうえで、適切に使える仕組みづくりが欠かせません。そのため、実現までの導入や学習にコストがかかりやすいのがデメリットです。
例えば、後述する「コンテナ型仮想化」や「CI/CD」の概念理解に加え、それらを扱うためのツールを導入し、使い方も覚えなければなりません。取り組みにあたっては、担当者への教育の場を設けたり、ツール導入に向けた環境整備を行ったりする必要があります。
DevOpsは一朝一夕で実現できるものではありません。一定の時間や費用が必要になることを念頭に置き、十分なリソースを確保して計画的に進めることが求められます。
デメリット2:変革にともない反発や摩擦が生じやすい
DevOpsは単なるツールの導入ではなく、組織文化や働き方そのものを変革する取り組みです。開発チームや運用チームの全員が変革の影響を受ける性質上、反発や摩擦が生じやすい点にも注意しましょう。
特に、これまで分業していた開発チームと運用チームの境界線をなくすため、業務フローが大きく変化します。新しい役割を求められる影響もあり、導入初期は現場の反発が起きるケースも少なくありません。
人的な負担や感情を考慮せずに進めると、かえって生産性が低下し、組織の不満を招いてしまいます。従来のアプローチを大きく変更することで、一時的な混乱やコミュニケーションコストの増加が発生する場面もあるでしょう。
新しい体制が定着するまでは、メンバー間の認識を丁寧にすり合わせながら進めるマネジメントが不可欠です。
4.DevOpsの実現に用いられる技術・手法
ここからは、DevOpsの仕組みを実現するための技術・手法について解説します。
作業が自動化される「CI/CD」
「CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)」とは、開発やリリースにおいて発生する作業を統合的に自動化することで、継続的な開発・リリースを実現する仕組みです。
CIの場合は、変更したプログラムを自動でビルド・テストし、テスト結果に問題がなければ変更を反映してリリース可能な状態にします。
一方、CDは自動化の範囲がより広く、本番環境への展開まで行います。
CI/CDを導入する場合は「Jenkins」などのCI/CDツールを使用しましょう。
開発と運用に関わる一連の作業を自動化できるCI/CDは、DevOpsを実現するうえで特に重要といえます。
処理速度が速い「コンテナ型仮想化」
複数のソフトウェアを開発・運用する場合、各々に専用のOS環境を用意するためには、大幅なITリソースが必要です。
限られたITリソースを効率的に活用するには、仮想化技術が欠かせません。
仮想化技術のなかでも、DevOpsと相性がよいのが「コンテナ型仮想化」です。
コンテナ型仮想化とは、1つのコンピューターOS上に複数の仮想環境を構築する技術を指します。仮想環境ごとにOSを用意する従来の仮想化技術と比べて軽量であり、処理が速いことが特徴です。
ビルドやテストが頻繁に発生するDevOpsでは、コンテナ型仮想化による処理の高速化が、作業の効率化につながるでしょう。
人為的なミスを防ぐ「Infrastructure as Code(IaC)」
「Infrastructure as Code(IaC)」とは、ソフトウェアの稼働に必要なインフラ(ネット環境やサーバーなど)の設定や構成を、プログラムとして記述・管理する手法です。
複数のサーバーを構築する場合、従来は担当者が手作業で1つずつ設定する必要がありました。
しかし、IaCを導入すれば、あらかじめ記述されたプログラムを適用するだけで、容易に設定可能です。
DevOpsにIaCを採用することで、インフラの構築や運用、保守における手作業を減らせます。結果として、人為的なミスの抑制につながるでしょう。
IaCを取り入れる場合、インフラを構成する要素の一元管理や、それらの管理で生じる作業の自動化が可能な「構成管理ツール」を用いることが一般的です。
5.DevOpsの導入に欠かせない要素
開発現場にDevOpsを導入するうえでは、組織文化・ツールの両面からアプローチすることが欠かせません。これらを含めた3つの要素について解説します。
組織文化の抜本的な見直し
DevOpsを導入する場合、独立していた開発チームと運用チームを統合し、組織体制を大きく変える必要があります。
しかし、開発と運用では価値観が異なるため、意見の相違が生じている現場も多いでしょう。
開発チームは、機能追加や機能改善を積極的に行い、ソフトウェアの品質を向上させたいと考えている人が多いでしょう。
一方で運用チームは、既存ソフトウェアの稼働を安定させるために、積極的な変更は好まない傾向にあります。
こうした意見の相違を解消するには、組織文化の抜本的な見直しが必要といえるでしょう。
適切なツールによる自動化
先述した通り、DevOpsの実現にはCI/CDツールや構成管理ツールなど、ツールの活用が欠かせません。
DevOpsに関するツールは多数存在するため、適切なものを選択したうえで導入する必要があります。
自社サーバーが不要なクラウド型ツールの場合は、初期費用を抑えやすい反面、継続的な利用コストが必要です。
一方、オンプレミス型ツールの場合は、運用上のカスタマイズがしやすい反面、自社サーバーの構築に多くの初期費用がかかります。
ツールによって機能も異なるため、コストも考慮しながら開発現場に適したツールを選択しましょう。
継続的な効果測定と改善
DevOps実現に向けた取り組みは、一度実施して終わりではありません。アジャイル開発の改善サイクルと同じように、継続的に効果測定と改善を繰り返していく「フィードバックループ」が不可欠です。
運用チームは、システムの稼働状況やパフォーマンスを監視し、得られたデータを分析します。そこから課題や改善点が見つかれば、それらを開発チームへフィードバックし、その内容を次の開発サイクルに反映していく流れです。
継続的に効果測定と改善を重ねることで、開発や運用のプロセスを段階的に見直していけます。このようなフィードバックループを通して、開発プロセス全体の品質向上につながるでしょう。
6. DevOps導入で失敗しないためのポイント
DevOpsの導入を成功させるためには、ツールや体制の整備以外にも気をつけるべきポイントがあります。ここでは、失敗を避けるための重要な2つのポイントを解説します。
ポイント1:導入自体を目的化しない
DevOpsを実践する際、ツールの導入やCI/CDの構築が目的になってしまうケースが少なくありません。しかし本来の目的は、プロセスの変革を通してソフトウェアの価値や開発効率を高めることです。手段を、本来の目的と取り違えないように注意しましょう。
達成すべき目的を正しく見据えるためには、具体的な目標を設定することが大切です。例えば、リリース頻度の向上や障害対応時間の短縮など、数値化できる指標を定めて導入を進めます。
明確なビジネス目標を組織全体で共有することで、チームが同じ方向を向いて変革を推進できるでしょう。
ポイント2:セキュリティ対策を後回しにしない
開発とリリースのスピードを重視するあまり、セキュリティ対策をおろそかにするのはハイリスクです。特に、新たなツールや技術を導入する際に十分な対策を行わなければ、脆弱性(セキュリティ上の弱点)が見逃される恐れがあります。
そのため、開発の初期段階からセキュリティ対策を組み込むことが理想です。
その実現にあたり、近年は「DevSecOps(デブセックオプス)」という概念が注目されています。これは開発の初期段階からセキュリティ要件を組み込み、安全性を担保する考え方です。
DevOpsを推進する際は、開発スピードの向上と並行してセキュリティの確保にも努めましょう。
まとめ:DevOpsの導入は生産性向上につながる
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DevOpsとは、開発担当者と運用担当者が密接に連携しながら開発・運用を行い、ソフトウェア開発の価値を高める考え方や仕組みのことです。
生産性の向上やリリースの高速化、サービス品質の向上につながるなど、開発側にとって多くのメリットがあります。
DevOpsを実現するうえでは、組織文化・ツールの両面からのアプローチが欠かせません。
DevOpsの実現に向けた取り組みは、開発現場全体が協力しながら進める必要があるため、決して容易ではないでしょう。
まずは現場で開発の目的や認識をすり合わせたうえで、DevOpsの導入を検討してはいかがでしょうか。




